「香波ちゃん何言ってんの?俺に今まで散々嫌なことされてきたでしょ?それなのに俺のこと嫌いじゃないの?」


心底不思議そうというか、不思議を通り越して半ば不審そうな表情で柏木くんが問いかけてくる。


正直私は、柏木くんのことが嫌いか好きかとか、そんなこと考えたことがなかった。


確かに柏木くんにはいろいろなことを言われたりして嫌な気持ちになったことはあるし、迫られた時は怖いと思ったこともある。


だけど、嫌いなんて一度も思ったことはない。



「嫌いなわけないですよ。
だって柏木くんは、初めて私に好意を示してくれた人だから」



いつものしどろもどろな感じではなく、自分でも少し驚いたぐらいにしっかりとした口調で答えていた。


そんな私の答えを聞いた柏木くんは、泣いているのかわからないけど、目を赤くしている。


「柏木。お前、香波にここまで言わせたんだから、いい加減正直に話せよ」


相沢くんが謎の言葉を柏木くんにかけると、柏木くんは何故か私に頭を下げた。



「ごめん!香波ちゃん!本当にごめん!」



え?え?


訳がわからずハテナマークが頭上に現れる。


「えーと???」


首を傾げる私に、顔をあげた柏木くんは申し訳なさそうな顔をする。



「ごめんね、香波ちゃん。
俺は君のことを好きだったわけじゃないんだ」