「何だ、ちゃんと目見て話せんじゃん」



すれ違いざまに、私の肩をポンと叩いて相沢くんは言った。



「昨日は悪かったな。あんなこと言って」



振り返ってみれば、そこにはいるのはふわりと優しく笑っている相沢くん。


初めて見た彼の笑顔にもちろんびっくりはしたけど、それよりも昨日のことを謝ってくれたことが嬉しかった。


相沢くん、別に間違ったことなんて言ってないのに……。


図星をつかれてその相手がサボり魔で有名な相沢くんだったから余計ムキになって、それで怒鳴ってしまっただけ。


相沢くんが謝ることなんてないのに……。


というか、こんなに誰かと話したのって相沢くんが初めてなような気がする。
そう思うと、何だか急に恥ずかしくなってきて。


「じゃ、じゃあ!私はかか帰りますねっ!」


私は早口で言うと、その勢いのまま教室を飛び出した。



あんなふうに笑いかけられたことなんて今までなくて。
どう返したらいいのかわかんなくて。



でも、本当に嬉しかった。



文実委員、やっぱり相沢くんとだったら頑張れるかもしれない。


ううん、頑張りたいの。


この文実委員になったことがきっかけで、自分が変われるかもしれないと思うから――。