「相沢くん……いるかな?」


教室を覗くと、私はびっくりして思わず言葉を失った。


教室の中は、私たちの知らない間に普段の姿から大変身している。
壁も床も可愛い装飾が施されていて、テーブルも綺麗なクロスが引かれていて本当のカフェみたい。おしゃれなのに、可愛らしさがきちんとあって、男女逆転喫茶に相応しい雰囲気に仕上がっていた。


「よう、香波」


美術係のみんなももう帰っているらしく相沢くんひとりだったから、私は迷うことなく素敵な世界となった教室の中へ飛び込む。


「すごい!すっごく素敵だね!もうほとんど完成ですね!」


「まあな。みんなサボらねぇでちゃんと働いてくれるからこっちは順調だよ。そっちは?」


「こっちも順調ですよ!見てください!」


さっき完成したメイド服を得意気に見せると、相沢くんも「すげー!」と喜んでくれた。


「あー……でも俺がこれ着るのか……」


「ちゃんと可愛くできたので心配ありません!」


「そういう問題じゃねーよ」


呆れる相沢くんを見て、私は「そうだ!」と思い出した。


「あの、試しに1回着てみてくれませんか?」


「何でだよ。嫌だよ」


ソッコーで、なんなら少し食い気味に断られた。


「でもサイズがちゃんと合うか心配なんですもん。お願いっ……!」


この通り、と両手を合わせて頭を下げると、相沢くんはとてつもなく嫌そうな顔をしつつもメイド服を受け取った。


「しゃーねえな……」


「ありがとうございます!」


そして、相沢くんのお着替えが終わるのを待つこと数分……。