夕陽が差し込む家庭科室にて。
「やったー!完成ー!」
ぴらっと出来上がった衣装を掲げる美術部の藤崎さん。
自分が描いたデザイン画と見比べてみて、満足そうに大きく頷いた。どうやら納得の出来だったみたい。
「桜さん、こんな感じでどうかな?」
まずはメイド服を一着試しに作ってみて、デザインを決定させたら人数分作ることになったんだけど、その最初の一着目が予想以上にクオリティーが高くてびっくり。
「す、素敵です……!可愛いです!」
黒を基調としたワンピースに、白いエプロン。
ワンピースは長めの丈だけど裾にはたくさんのフリルがあしらっていてとにかく可愛い。
エプロンにはハートの形のポケットなどもあって、結構細かいところにまで凝った衣装となっていた。
「すみません。私、文実委員の準備のほうもあってなかなかこっちのお手伝いができなくて……」
こんなに素敵に作ってもらえて有難いけど、私が手伝えたのはほんの一部分だけ。
お裁縫は得意なほうだけど、文実委員の仕事に駆り出されることが意外にも多くて、ほとんどアキちゃんたちに任せっきりになってしまった。
申し訳なくて頭を下げると、藤崎さんは「全然いいよ」と優しく言ってくれた。