どのクラスも文化祭の準備で、騒がしい声が廊下まで響いているはずなのに。


野川先輩がそう言った瞬間、時が止まったかのような感覚に見舞われたというか。


周りの音なんて、何も聞こえない。
ただただ、野川先輩の言葉の意味を理解しようと、頭の中でさっきの言葉を何回も思い出す。


振られたって本当に?何で?どうして?


だって相沢くんは、私に野川先輩の姿を重ねてしまうぐらいに先輩のことが好きで。
それは野川先輩も同じで。
私が入る余地なんてまったくないくらいで……。


混乱する私をよそに、野川先輩はすごく落ち着いていて、さらに言葉を続ける。


「好きな人がいるんだって。きっぱりと気持ちいいくらいに振られたわ」


「わ、私っ、相沢くんはずっと野川先輩のことが好きなんだと……」


「えー?どうしてそう思ってたの?」


ケラケラと笑う野川先輩。
その姿を見て、先輩の言っていることは本当なんだってやっと信じることができた。



「頑張ってね、桜さん。応援してるわ」



優しく笑った野川先輩。
まだ教室に着いてなかったけど、「ここまででいいわ。ありがとう」と野川先輩は私から荷物を受け取って歩いていってしまった。


いまだに頭がついてこなくて、私は呆然とその場に立ち尽くして先輩の背中を見送る。


まだ考えがまとまってないけど、ただひとつわかったことは……。



新たな恋敵の出現!ということ……。