「好き同士のふたりが、わざわざ家までお見舞い行って、それだけで済むのかな……」



その言葉で、頭の中から消そうとしていた想像がはっきりと形になってしまう。


楽しそうに笑い合う2人の様子しか、頭に浮かんでこない。


「今頃2人でキスとかしちゃってんのかもよ。だからさ、香波ちゃん。俺に……」


そう言いながら私の顔を再び覗き込んだ柏木くんが、驚いたように目を見開いた。


「香波ちゃん、泣いてるの……?」


泣いてない。泣いてなんかいない。
そう思うのに、頬を流れるものが確かにあって、言い返すことができない。


相沢くんは大切な人だから、相沢くんが1番好きな人と結ばれて欲しいと思う。
その相手である野川先輩も相沢くんを好きなんだから、喜ばしいことなんだけど。


どうして、こんなにも悲しい気持ちになるの?
どうして、私だったらよかったのに、なんて思う私がいるの?



いつの間にか私は、こんなにも相沢くんを好きになっていた……。



「香波ちゃん……」


「やだよ……。相沢くん……相沢くん……!」


泣きじゃくる私を、柏木くんが優しく抱きしめた。



「香波ちゃん……俺にしとけよ……」



柏木くん……?


柏木くんの温もりが伝わってくる。


でも、彼の指先が心なしか微かに震えているような、そんな気がした……。