偶然、きっと偶然だよ。
もしかしたら、野川先輩は昨日風邪気味で、今日熱が出ちゃったのかもしれない。
委員長ともあろう立場なのに、相沢くんに会う為に大事な文化祭準備を休んだりなんか……。



「怪しいよねぇ、あの2人」



考えてることを読まれていたかのようなタイミングで、柏木くんが後ろから私に言った。


「……な、何がですか……?」


「相沢と、野川さんだよ」


平静を装って、何も知らないふりをして聞き返す。
予想通りの答えが柏木くんから返ってきて、ドクンと心臓が大きく波打った。


「相沢は昨日倒れたから大事をとって休んでるんだろうけど、野川さんは昨日は元気そうだったし風邪とかではないでしょ?昨日もわざわざ保健室まで様子を見に行ったぐらいだから、もしかしたら今日も相沢のお見舞いとか行ってるんじゃないかなぁ?」


柏木くんが、わざとらしく「香波ちゃんはどう思うー?」なんて聞いてくる。


どうって……知らないよ、そんなの。


「あの2人さぁ、なーんか妙に仲良いっていうか。野川さんは絶対相沢のこと好きだよね。俺が見る限り相沢も……」


「やめてっ!」


聞きたくない、聞きたくないよ。
そんなことぐらい私だってわかってる。


2人が会っていようが、私にはもう関係ない。
振られた私に、両想いの2人の間を邪魔する権利なんてない。