正直言って、今こんな気持ちのまま相沢くんには会いたくない。
会ったところで、いつも通りに接することなんて到底できない。
私は告白をする前から、振られてしまったようなものだ。
野川先輩は相沢くんのことが好きだし、私に先輩を重ねるぐらいだからきっと相沢くんも野川先輩のことが好きだ。
ふたりは両想いなんだから、間に入り込むなんてできるわけがない。
いや、もともと私なんかが入り込める隙なんて最初からなかったんだ。
というか、そんなこと考えてる場合じゃない。
「支度しなきゃ……」
行きたくなくても、私は文実委員。
やると決めたからには、きちんと最後までやらないと。こんなことでサボるわけにはいかない。
行きたくないとごねる心の中のもうひとりの自分にムチを打って、私は朝ごはんを食べに部屋を出た。
「おはよう、お母さん」
「おはよー、香波」
リビングに入ると、すぐにほかほかのご飯とお味噌汁を出してくれるお母さん。
「大丈夫?昨日は具合でも悪かったの?」
「ううん。もう大丈夫。心配してくれてありがとう」
にこっと笑ってそう言うと、お母さんは安堵の息をつく。
心配かけさせないようにしなきゃ。
もっとうまく、振る舞えるようにしなきゃ。