「……そうだよ」



一瞬、自分の耳を疑ってしまった。


「え……」


“そうだよ”?
やっぱり、私を通して野川先輩のことをずっと見てたってこと?


「教室でひとりでいる姿とか、いろいろ押し付けられてるところとか、委員長と似てるなって思って最初は声をかけたんだ」


相沢くんは表情ひとつ変えないのに、私はまた涙が溢れてきた。


やっぱりそうだったんだ。
今まで優しくしてくれてたのは、野川先輩と重ねてたからなんだね。


「でも……」



――ガラッ。



相沢くんの言葉は、まるで見計らったかのようなタイミングで開かれた保健室のドアによって遮られた。


「あら、お取り込み中だったかしら?」


現れたのは……野川先輩。


「いえ!先輩も相沢くんの様子見にきたんですよね!じゃあ、私は教室に戻ります!」


「おい、香波!まだ話の途中……」


「野川先輩、相沢くんまだ本調子じゃないみたいなので、起き上がらないように看ててあげてください!」


このままだと泣いてしまう。
野川先輩は今日もキラキラしていて、振られたばかりの惨めな私とは大違い。


こんな姿、相沢くんにも野川先輩にも見られたくない。


私は、また早口に言うだけ言って、保健室を飛び出していった。