「俺は、香波が無事で良かったよ」
「相沢くん……。私のことなんて気にしなくていいのに……」
温かい言葉に、また涙がこぼれてくる。
「あーあ」と呆れながら、相沢くんが保健室のティッシュを箱ごと持ってきてくれた。
「俺はこの通り大丈夫だったんだから、いい加減落ち着けよ」
「ず、ずみまぜん……」
鼻をかんで、涙を拭いて、相沢くんにはぐしゃぐしゃの顔を見られるし頭を撫でられるしで、恥ずかしいけど相沢くんの優しさが本当に嬉しかった。
やっと落ち着いた頃、そろそろ戻ろうと椅子から立ち上がった私に、相沢くんが意外なことを聞いてきた。
「あのさ、香波」
「はい?」
「お前……柏木のこと好きなの?」
「……へ?」
柏木くんを?私が?……好き?
「そそ、そんなわけ、ないじゃないですか!!」
何で、どうしてそんなことを聞くの。
「確かに柏木くんにはドキドキさせられたり、顔が真っ赤になっちゃったりするけど、それは違うドキドキというか!男の人にただ免疫がないだけで!だって私は、生まれてから今まで男の子と関わることなんて全然なかったし!」
私が好きなのは……好きなのは……!
「柏木くんは私をからかってるだけで何とも思ってないのは確かだし!私も何とも思ってないし!多分私みたいなのと関わるのが初めてだから、未知の生物と対面してちょっと物珍しいみたいな気持ちと同じなんだと思う!」