「……」
何となく気まずくて、相沢くんの顔が見れない。
「と、とにかく、まだ安静にしておいたほうがいいよ!準備は私たちに任せて、相沢くんはもうしばらく休んでてください!」
早口でまくしたてると、相沢くんは少しびっくりしながらも「おぉ」と頷いた。
「香波」
「?」
すると、スルリと相沢くんの右手が私の頭に伸びてきて。
「サンキュー、心配してくれて」
にこっと笑い、それから優しく2回、ポンポンと撫でてくれた。
“ありがとう”なんて、
そんなの私のセリフなのに。
なんて優しい人なんだろう、相沢くんは。
「相沢くんが無事で……本当によかった……」
だから思わず、私の頭に伸びてるその腕を、ぎゅっと掴んでしまった。
「香波……?」
「私のせいで、相沢くん怪我して、サッカー出来なくなっちゃったらどうしようって……。そう考えたら怖くて……」
相沢くん、良かった。
元気そうで本当に良かった。
震える手に気づかれないように、掴んでいた相沢くんの腕を離す。
「大丈夫だよ、香波」
離したはずの相沢くんの手が、私の頬に触れて、いつの間にか溢れていた涙をそっと拭う。
歪む視界の中で見えた相沢くんは、とても優しく笑っていた。