「香波……!!」



誰かの焦ったような声がしたと同時に、私の視界はひっくり返る。


どんと横から押された感覚のあと、気が付けば私はしりもちをついていて。



「相沢くん!!」



ガシャーンッ!というけたたましい音と、悲鳴に近い野川先輩の声。


作業の邪魔になるからと、棚の1番上に置いていた工具やダンボールの束。


それが上から落ちてきて、そして私を守ってくれたのだと理解するのにそう時間はかからなかった。


「……だい、じょうぶか……?」


怪我はないか、と自分の身よりも先に私に問いかけてくる彼。



「あ、相沢くん……」



とっさに私を庇ったせいで、自分はものを避けられず、重い工具をすべて背中で受けてしまっていた。


「相沢くん!!」


私の声を合図にしたかのように、みんなが一斉に駆け寄ってくる。


「相沢くん!しっかりして!」


野川先輩が呼び掛けるも、返事はない。


「誰か先生呼んできて!」


「はい!」


そんなやりとりも、私の耳には入ってこない。


──どうしよう。


「桜さんも大丈夫?怪我はない?」


相沢くんが大怪我を負ってしまっていたら。


「桜さん!」


遠くのほうで、野川先輩の声が聞こえたような気がした。