「相沢くん?どうしたんですか?」
「ひとりでペンキ持って帰んの大変だろ」
手伝ってくれるんですね……。
優しいなぁ、相沢くん。
確かにいてくれると助かる。なくなった分だけじゃなくて、他の色のペンキもできればもらってこようと思っていたところだったから。
「もうすぐで完成ですね、アーチ」
「だな。すげーよな、文実委員なったばっかの時は、こんなでっかいアーチほんとに俺らだけで作れるのかって思ってたけど」
確かにそうだ。
中学生の時に、ここの学校の文化祭に来て、校門のところに設置された大きなアーチをくぐって文化祭を見て回った。
あのアーチは、こうやって作られていたんだな、文実委員の人たちがみんなで協力して頑張った結晶なんだな、そう思うと自分が今、そのアーチ作りに携われていることが嬉しい。誇りにすら思う。
「素敵なアーチになるといいね……」
「ああ、そうだな」
陽の差す廊下を、そんなふうにまったり話しながら歩いていると。
私ははっと思い出した。
い、今なら……聞ける。野川先輩とのこと!
周りには誰もいない。ふたりきりの今、ここで聞くしかないと思う。
「あ、あの!相沢くん!」
「ん?」
立ち止まった私に釣られるように、相沢くんも足を止め、私のほうを振り返る。
「あのね、あ、相沢くんに聞きたいことが、あって……」
「聞きたいこと?何?」