「じゃあ、ここから半分は1年生。こっち側は2年生が色塗り担当ね」
「はーい」
絵の具を手にして、野川先輩に指示された通りの場所に、決めれた色を塗っていく。
綺麗に塗られて、徐々に出来上がっていく七色の虹のアーチ。
8月も中盤にさしかかった。文実委員の仕事はまだまだたくさんあるから、一番の大仕事であるアーチはそろそろ完成が見えてこないといけない。
でも、この分だと予定よりも早く終わりそうなぐらい順調に進んでいると思う。
「あ、ペンキがなくなっちゃった」
「じゃあ、私、新しいペンキもらってきます」
少しでも自分が役立てることがあれば。
そう思い、先輩の言葉を聞いてすぐに、さっと挙手して申し出る。
すると先輩は、少し驚いたのか目を丸くしたあと、何故かふふっと笑った。
「桜さん、文実委員なりたての頃は自分から進んで手挙げたりしなかったのにね」
「え……」
「いいことだと思うよ。じゃあ、お願いね」
先輩の言葉を不思議に思いながら、私は教室をあとにして廊下に出る。
……成長してるねってことかな。
褒めてもらえたのかな、だったら嬉しいな。
「何ひとりでニヤニヤしてんだ。気持ち悪い」
後ろから声がして振り向くと、呆れたように腕を組んでいる相沢くんがいた。