え……?相沢くん……?


「いいよな、清水?」


「もっちろん!ちょうど男子ひとり足りなかったし!」


「じゃあ、決まりなー」


にかっと笑った相沢くん。その笑顔に、ドクンと心臓が跳ね上がる。


もしかして、私の声が聞こえたのかな。あんな小さな声だったのに、ちゃんと聞いてくれてたのかな。


相沢くん……。


きゅうっと胸が締めつけられたように苦しい。
好きだ、という気持ちが溢れてきて、どうにかなってしまいそう。


「よかったねー!香波♪」


こそっと耳打ちしてきたアキちゃんだったけど、私はそれに応えることができない。相沢くんのことで頭がいっぱいで。


「香波?」


「アキちゃん……。私ね、相沢くんのことが好きすぎてどんどん自分が嫌な人間になってっちゃってる気がするんです……」


好きだからこそ、野川先輩のことがどうしても気になって。
最近、相沢くんの優しさが素直に受け取れなくなってしまっている。どうせ、私を通して野川先輩を見ているんだろうって。


今でこそ野川先輩は相沢くんのおかげで変わったけど、中学の時の野川先輩を思い浮かべて私に声をかけたのは事実だと思う。


今も私と野川先輩を重ねてないとは言い切れない……。


すごく聞きたい。野川先輩のことや、私のことをどう思っているのか。でも、そんなことを聞く勇気なんて、私にはない。


聞けないなら、このモヤモヤした気持ちを我慢しなくちゃいけないんだけど。



「好きが溢れて、どうしたらいいのかわからなくなるの……!」



慰めようとしてくれたのか、アキちゃんが優しく私の頭を撫でてくれた。