ピロリロリンと、可愛らしく短い音が携帯から鳴った。
相沢くんから。メールの返信は1分もしないうちにすぐに送られてきた。
【香波も行くの?】
……何でそんなこと聞くんだろう?
そう思いながらも、【私も行きます】と返すと、またすぐに返信が来た。相沢くんは、結構メールの返信が早い。まあ、それは置いといてですね。
メールを開き、そこに綴られた文字を見た瞬間、私の心臓が大きく波打った。
【じゃあ行くわ。香波が行くなら俺も行く】
別に、私が居なくたって、相沢くんが困ったりすることはないのに。そもそも私なんていてもいなくても、相沢くんにとってはそんなに大きな問題ではないはずでしょ?
もしかしたら、私がひとりぼっちにならないようにって心配してくれたのかもしれないけど、相沢くんは私がアキちゃんと友達になったことは知ってるし……。
私が行くなら行くってことは、私が行かないって言ったら相沢くんも行かないの?
どうして……?
嫌な気持ちでいっぱいだったはずの心に、小さな淡い期待というものが生まれてしまう。
違う、相沢くんは私が野川先輩と似てるから気にかけてくれてるだけ。
相沢くんは別に“私”のことはどうでもよくって……。
「相沢くんは……野川先輩のことが好き……なのかなぁ……?」
ぽつりと、小さくつぶやいたはずの言葉は、一人のこの部屋にやたら大きく響いて、消えた……。