疲れていたせいか、一度目を瞑ってしまえばあっという間に深い眠りについた。

夢を見る暇も、暑くて寝苦しいと思う余裕もなく、しかしそれでも夜中に目を覚ましてしまったのは、突然ぎゅっと体が締め付けられる感覚がしたからだ。


「ん……?」


ゆっくりと瞼を持ち上げると、霞む視界の中でゆらゆらと動く黒いものが見える。

なぜか動かしにくい体をなんとか動かして目を擦り、まだぼうっとする頭を働かせてみると。

だんだん、それが何なのか、わかってきた。


「……朗……?」


目の前で揺れるそれは、朗の長めの黒髪。

そして体が締め付けられ動かしにくいのは、朗がそこにいて、わたしを抱き締めているから。


「……夏海」


耳元で、消え入りそうな朗の声が聞こえた。