もちろんそのすべての元凶であるこいつは、何ひとつ気にしちゃいないけれど。
「夏海はすごくいいやつなんだ。俺のために、頑張ってくれる」
朗がおいしそうにおまんじゅうを頬張りながらそんなことを言うから。
俺のために、なんて言い方やめろ、そう思ったけれど、いや、確かに朗のためだと思い直す。
「へえ……」
机を挟んで向かいに座っていたおばあさんは、わたしと朗を交互に見遣ると、やがてにいっと笑った。
「そっか。あれだね、愛のパワーってやつだね」
「は!?」
飲み物を飲んでいたら吹き出すところだった。
何を言い出すんだこの年寄りは。
「ち、違いますよ! わたしたちはそんなんじゃないです!」
「え? 違うの? あっはっは」
朗らかに声を上げるおばあさんにわたしはむっと口をつぐみながらも、顔が赤くなっているのが鏡を見なくてもわかっていて、まさに穴があれば入りたい気分だった。