は、と声にも出せず口だけ開けて固まっているわたしの横で、朗は少しも驚いた様子を見せず笑っていた。


「そっか、ありがとう。すごく助かる」

「いいよ。今は私ひとりで暮らしててね。ちょうど部屋が余ってるんだよね」


おばあさんが、元々しわくちゃだった顔をさらにしわくちゃにするから。

固まっていたわたしはハッと我に返り、楽しげにおばあさんと話す朗を押しのけた。


「で、でも、悪いですよ、そんなこと」

「いいのいいの、これもひとつの縁だと思いなよ」

「そうだぞ夏海」

「朗は黙ってて!」


いくら寝る場所がないからって、出会ったばかりの見ず知らずのひとに泊めてもらうなんてこと、できるわけがない。

まあ、出会ったばかりの見ず知らずの人間とともに、無謀な旅をしてるわたしが言えることではないかもしれないけれど。