こんな遠くから、しかも自転車で海に行こうなんて、馬鹿な奴だと思われても仕方のないこと、むしろ当然。

だけどおばあさんは驚く様子もなく、ただ朗らかに笑って見せる。


「あらまあ、海に。そう、楽しそうだね」


その言葉に馬鹿にしている様子はなくて、つまり本当にそう思ってくれているみたいだ。

年寄りの思考は、よくわからない。


「ああ、すごく楽しい。な、夏海」

「え、あ、うん、まあ……」


少し拍子抜けしながら、わたしはころころと笑い合う朗とおばあさんを見つめていた。



「でももう日が暮れるよ。これからどうするの?」


ふいに思いついたように、おばあさんが朗に訊ねた。

朗は軽く首を傾げながらそのままわたしに振り向き、それにつられるようにおばあさんもわたしを見遣る。

答えを求めるように、ふたりの瞳がわたしに向けられていた。