「……だけど、もう知ってるでしょ」


溶けかけたアイスの最後の一口を食べた。

やっぱりおいしい、そう思った。


朗が、ちらりとこちらを振り向く。

その瞳は、まるで高い夜空みたいに、透明で深く澄んでいる。


だけど、奥深くに包み込んだまま、ただ全てを諦観しているような、そんな雰囲気もどこかにあって。


それがなぜだか、やっぱりわたしにはわからなくて。


だけど、わかっていることも、きっと少しは、あるんだと思う。



「朗は知ってるでしょ。海が遠いことも、夏が暑いことも、アイスがすごくおいしいことも」


朗の瞳を見つめ返す。


柔らかい風が吹き抜ける。

その風は、相変わらず生温い。