「……何もないなら見ないでよ。なんか、食べにくいじゃん」
「うん、ごめんな」
口ではそう言うけど、顔はにこにこと笑ったままだ。
なんとなく釈然としないままソーダのアイスを一口齧り、ちらりと朗の手元を見遣ると、アイスの先が溶け、滴が垂れようとしていた。
「朗、溶けてるよ」
顎でそれを指すと、朗は焦ったようにアイスを持ち上げて。
とっとと食べればいいのに律儀に「いただきます」なんて呟きながら、恐る恐る、滴をぺろりと舐め取った。
「……おいしい」
噛み締めながらそう言って。
そしてもう一度、確かめるようにアイスを舐めた。
「うん、やっぱり、おいしい。なあ、夏海」
「知ってるよ」
「だよな。おいしいもんな」
朗は、それからしゃくしゃくと夢中でアイスを食べ始めた。