「これに決めた。夏海、これなら買えるかな」


やがて朗が手に取ったそれは、棒がささったソーダ味のアイスだった。

金額を見れば、ギリギリだけど買える値段だ。


「うん、大丈夫。じゃあそれにしよっか」

「ああ」


にこにことパッケージを眺めている朗を横目に見ながら、店の奥に向かって声を掛けると、しばらくしてからひょっこりと、70代くらいのおばあさんが顔を出した。


「あら、お客さんがいたんだね。気付かなくてごめんね」

「いえ。あの、このアイスをひとつください」


朗が持つアイスを指差して、スカートのポケットからなけなしのお金をおばあさんに渡した。

返って来たお釣りでは、もうジュースすら買えない。


「そこのベンチで食べてもいいですか?」

「うん、いいよ。ゆっくりしていってちょうだい」


おばあさんは朗らかにそう言って、再び奥へと消えていった。