痛む体を無理やり動かして振り向くと、期待に満ちたような満面の笑みを浮かべた朗が立っている。
なんだか少し腹が立つ。
「……どうしたわけ」
「アイス、食べよう」
……呆れてものが言えないって、このことだろうか。
お金なんて持っていない癖に、いくつもアイスを抱えて嬉しそうな顔をしている朗を、わたしは黙って見つめ返すことしかできない。
そうしたら聞こえていなかったとでも思ったんだろうか、朗がもう一度「アイスを食べよう」と繰り返すから。
わたしはこれ見よがしに、大きく息を吐いた。
「あのね、そんなにいっぱい買えないって」
「え、なんで」
「なんでだって……お金が足りないからだよ。とりあえずそれ全部返してきて」
「そっか……わかった」
とぼとぼと店の奥へ引き返していく背中を見ながら、スカートのポケットに手を突っ込む。
中から出てきた小銭は、100円とちょっと。
ものによれば、ひとつくらいなら買えるかもしれない。