山道を抜け、ところどころ民家が立ち並ぶようになった細い道。

夕焼けでオレンジ色に染まる空間の中を、わたしたちは相変わらず地道に進んでいた。


ゆっくりと過ぎていく景色、そして時間。



どこか遠くの道路から、わらび餅を売る声が聞こえてくる。

そんなに好きなわけでもないのに、あの声を聞くと無性にわらび餅が食べたくなるのは不思議以外に言いようがない。

だけど、わらび餅の声は、どんどん離れていくばかり。

虚しい余韻だけが、静かに響く。



「……おなかすいた」


もう何時間も何も食べていない。

こんなにも体力は消耗しているのに。


何か食べたい、いや、せめて何か飲み物がほしい。

何でもいいからとにかく口に入れたい。

もちろん、食べられる物を。