黙って朗の背中を見ていたわたしは、ふと、視界の端に青い花が咲いているのを見つけた。

名前も知らない、美しい雑草。

なんとなくそれを摘んで、朗の隣に一緒にしゃがんで、猫が埋められた土の上へ置いた。


「お墓には、こういうの付きものでしょ」


朗を見ないまま呟く。

朗は、少しの間わたしを見つめていたけれど。


「そうなのか。夏海は物知りだな」


そう言って、小さく笑った。



違う、わたしが物知りなんじゃない、朗が何も知らないだけだ。

でも、それを言い返す気にはなれなかった。


それにわたしはそのとき、なんとなくだけど、朗は、わたしが知らないことを知っているんじゃないかと、猫の墓を見ながら、思っていた。