もう、可哀想だという気持ちすら抱けていなかった。
ただの嫌悪感、感じるのはそれだけ。
たとえ今まで生きていたものだとしても、そんな姿になった今じゃ、捨てられたゴミと変わりないんだ。
汚い物、その内誰かが処理する物、放っておけばいい物。
なのに。
「なにが」
朗が、猫を抱き抱えたまま、僅かに目を細る。
「え……?」
「なにが、汚い?」
「なにが、って……」
そんなこと、言われるまでもないし、考えるまでもない。
常識的に考えて、汚いに決まっているんだから。
当たり前で、当然で。
わたしは間違ったことなんて、決して言っていないはずなのに。
なのに、なぜか、何も言うことができなくて。
朗が、目を伏せ死んでしまった猫を見つめながら、歩きだす。
道の脇にある繁みの中。
僅かに生える草を掻き分ければ、そこにはアスファルトの敷かれていない、剥き出しの土が見える。