「止まれって……なんで」

「いいから早く」


有無を言わせぬその様子にしぶしぶブレーキを掛ければ、朗は止まった自転車から降りて、真っ直ぐに轢かれた猫の元へ歩み寄っていった。

別の嫌な予感が、高まっていく。


「朗、なにするの?」


その背中に向かって声を掛けても、朗は振り返ることも、答えることもない。

そのまま猫の傍に行きしゃがみ込んで、横たわった小さな体を、そっと両手で包みこんだ。


「やめなよ! 汚いってば!!」


驚きを隠せないまま声を上げた。

ありえない、轢かれた猫の死体を素手で掴むなんて。

そんなもの、その内誰かが片付けるんだから、見て見ぬ振りでもして放っておけばいいのに。