それは1枚の古い紙だった。
所々破れているけれど、テープで丁寧に直されている。
「持ってきておいてよかったよ。確かに、道がわからないと困るもんな」
渡されたそれを受け取り、四つ折りにされているのを丁寧に開いた。
「あ、これ……」
それは、この辺りの地域を描いた地図だった。
車で何時間も掛かる様な距離を、僅か数センチに縮小した地図。
そしてその中には、明らかにあとから書き足したとわかる、赤い線が書かれている。
所々くねくねと折れ曲がり書かれた、1本の線だ。
それは、わたしたちが住むこの町と、海のある町を繋ぐ線だった。
「赤い線が、ここから海までの道筋だ。それがあればわかるか?」
朗が体を傾け、わたしの顔を覗き込む。
「うん……なんとか行けるかも」
「そっか。なら頼んだ」
朗が、満足げに笑った。