「ねえ、ちょっといいかな」


赤信号に当たりブレーキを掛けた。

振り返ると、朗がきょとんとした顔で首を傾げる。


「なに?」

「あのさ、とりあえず方向的には合ってるとは思うんだけど、わたし海への道、知らないんだよね」


車だと、高速に乗って海辺の町まで行けるけれど、当然のように自転車で高速に乗ることはできない。

ということはつまり、下の道を地道に進むしかないわけだけど。

そんな遠くの町までの道のり、わたしが知っているわけもなく。


とりあえずどっちの方面にあるかくらいはわかるから、そっちに向けて進んではいるけれど、知らない場所に出たらどう行けばいいかわからなくなるに決まってる。


「ああ、それなら大丈夫だ」

「道知ってるわけ?」

「知らないけど、わかる」

「は?」


朗は「心配するな」と笑顔を向けると、何かをカーデのポケットから取り出した。