駐輪場は、グラウンドのすぐ脇にある。

だからここからは、真夏の空の下、汗を流して走り回る野球部の姿がよく見えた。


朗は、わたしの自転車に跨りながら、グラウンドで繰り広げられるその光景を眺めていた。

大きな楠の影になった彼の肌は、黒く焼けた野球部員たちのものとは、対照的な色をしている。



「野球好きなの?」


問い掛けると、朗はグラウンドからわたしに視線を移し、ゆるりと笑う。


「いや、やったことがないから、どんなのだろうって見てただけだ」

「へえ……そうなんだ」


男の子で野球をやったことがない人も珍しい。

そう感じながらも、「早く乗れ」と急かす朗の言葉に、そう思ったことすらすぐに忘れてしまった。



「……でもさ、なんでかなあ」


呟きながら、わたしは朗と同じように自転車に跨る。

「なにが」と朗から当たり前のように返事は戻ってくるんだけれど。


その声は、背中から聞こえて。