静かな廊下を抜けていく、軽やかな足取り。
それと比例するように、ずんと重くなる、わたしの気持ち。
だって、何を嬉しそうに。
馬鹿なことを言って。
馬鹿なことを言っていると思いもしないで。
そんなこと。
「無理に決まってるでしょ!」
足を止めて声を上げる。
静かな空間に、その端がこだまする。
「どうした、夏海……」
さすがに朗も驚いたのか、立ち止まって振り向いた。
目を丸くしながらわたしを見つめて、何が起きたんだとでも言いたげに。
「どうした、じゃないよ! ここから自転車で海になんて行けるわけないってば!」
無茶苦茶すぎる、そんなこと。
車でだって、何時間かかるかわからないのに。