気が付くかな、夏海。
◇
俺の宝物を、お前に預けるよ。
隣の部屋の山本さんから、お菓子が入っていた缶をもらったから、それに入れておくことにした。
あれだったら、少しくらい雨に濡れても平気だろう。
俺の大事なものと、お前への手紙を、その中に入れた。
お前は知らないだろうけど、あのあと、俺はもう一度だけ学校に行ったんだ。
父さんに無理を言って連れて行ってもらって、あの日、お前を見つけたあの場所へ行った。
そこに、置いておいたから。
ちゃんと見つけてくれよ。
別に、少しくらい遅くなってもいいけど。
でも、なるべく早く見つけてくれ。
だって、あれには、お前に伝えたいことが入っているんだ。
お前はどこか抜けているから心配だ。
笑っていてほしいと、そう思うけれど。
ひとりで泣いたりしないだろうかと。
苦しいことを、抱え込んだりしないだろうかと。
だから、お前に言えてなかったことを、伝えるよ。
それで、少しでもお前が救われてくれたら、俺も救われる。
なあ、夏海───