帰り道は、夏海の父親の車に乗って帰った。


後部座席に並んで座って、互いに肩を寄せ合って眠った。

その夜はもう、悪い夢は見なかった。

何の夢を見たのかは、今は覚えていないけれど。

目が覚めたとき、とても気分がよかったから、きっとお前の夢でも見ていたのかもしれない。




あれが、もうお前と会える最後の瞬間だと、俺はわかっていた。


たぶん、お前もわかっていたんだろう。

もう、二度と会えることはないって。



だけどお前はさよならなんて、絶対に言わなかった。

何度も何度も、またね、って、笑ってそう言っていた。



また会おうね、って。


笑うその顔が、今にも泣きだしそうだったから、俺はつい笑ってしまった。

そうしたらお前は怒ったよな、なんで笑うんだって。


笑ったり泣いたり怒ったり、本当に忙しいやつだ。

だけど、知ってるよ。

お前は最後には、絶対に笑うんだ。


その顔が、俺は好きだから。

出来ればお前には、ずっと笑っていてほしい。


だから、俺も、言っただろう。



また会おう、って。