お前の声が聞こえたんだよ、夏海。



あのときお前は、朝までずっと、俺を抱いていてくれただろう。

寝苦しくて死にそうだったって、お前は怒ったっけ。


でも俺は、とても温かかった。

本当に、温かかったんだよ。


あの夢の続きは、よく覚えていないけれど、とても幸せなものだった。

きっと、ずっと、お前が傍にいてくれたからだろうね。




お前は、俺にできないことは何でもしてくれた。


だから俺も、お前のために、俺のできる全てのことをしてやりたかったんだ。


何が出来るだろうと、俺がずっと考えていたことを、お前は知らないだろう。

お前がぷんぷん怒りながら自転車を漕いでいる後ろで、俺はずっと考えていたんだ。



だけど、思いつかなかった。

俺ができることなんて、本当に、ひとつもなかったんだ。



でも、夏海、見つけたよ。



あの神社で、お前が話してくれたこと。

『死のう』と決めた理由じゃない。


『生きたい』と思う、心からの気持ちだ。



だから、なあ、俺は、お前の生きる理由になろうと思ったんだ。