綺麗な髪だと思った。
少し明るいその髪は、日の光を浴びると一層きらきらと輝いて。
風に揺れるその髪を、なんとなく、目で追っていた。
それが止まったのは、屋上の縁。
柵の付いていないそこに立ち、その知らない誰かは、足元を見つめていた。
死のうとしているのだと、わかった。
それを止める気は、別になかった。
死にたいのなら、死ねばいい。
自分の命は自分だけのもの、俺には口を出す権利なんてない。
だけど、ふと、思って。
本当に、ふと。
空を見上げて、その青に、別の青を想って。
ああ、そうだ。
俺は自分の力で、それを掴むことができないから。
だったら、誰かに、一緒に手を伸ばしてもらったらいいじゃないか。
そう、思ったんだ。
◇