紙の片方は、何かすぐにわかった。 それは、朗がずっと持っていた、この街から海への道を示した地図だ。 朗の宝物だったはずのそれ。 それがなぜ、ここに入っているのだろう。 わたしはそれを缶の中に残したまま、もう1枚の紙を手に取った。 それは、朗の父親がわたしに寄越した手紙と、同じ便箋だった。 かさかさと音を立てながら畳まれていたそれを開いていくと、そこには整った綺麗な文字で、わたしへの言葉が書かれていた。 “夏海へ”