見たことなんてない。

だけどすぐにわかった。


朗の字だと。



知らなかった、あの後、朗はここに来ていたんだ。

そしてわたしに、これを残した。



「……ばかじゃん」


わたしが来なかったらどうするつもりだったんだろう。

きっと、そんなこと少しも考えていなかったんだろうな。

そして彼の思惑通り、わたしはここに来てしまった。


ばかなのは、きっとわたしのほうだ。



しゃがみ込んで、その缶に手を掛けた。

数日前の雨に打たれたせいか、少しだけ汚れてはいるけれど、まだ真新しい。


そっと蓋を開ける。


そこには、2枚の紙と、綺麗な色をした貝殻がひとつ、入っていた。