わかったよ。
きみが言うなら笑うよ。
上手く笑えるかどうかはわからないけど。
きみが嬉しいと、わたしも嬉しいから。
「夏海」
朗は、わたしの名前をよく呼ぶ。
確かめるように、刻み込むように。
「なつみ」
もっと呼んで。
刻みつけて。
きみの中にも、わたしの中にも。
「お前が明日を生きていると思うだけで、俺は、しあわせだ」
そう、他にはなにも、見えなくなるくらいに。
「だから、生きて」
───少しだけ触れ合った唇は、ひどく熱かった。
お互いの熱が、そこにだけ集まっているみたいに。
ねえ、この熱さも、忘れないでいてね。
確かに感じた熱を、想いを。
きみが体温を失くしても、ずっと、ずっと。