「夏海」

「やだ。わたしひとりじゃ無理だよ」

「夏海、聞いて」


朗がもう一度、抱え込むようにわたしを抱いた。

顔を埋めた胸からは、心臓の音が聞こえてくる。


それは朗の音。


確かに今、生きている、彼の鼓動。



「……夏海はきっと、みんなに愛される。ひとりじゃない。

お前のまわりには、お前を愛してくれるひとがたくさんいる」



髪を撫でる朗の手が、優しくて、温かくて。

わたしは、声も出せずに泣いた。

分厚いカーディガンを握りしめて。


きみが、消えてしまわないように。



「だけど、いつでも、一番お前を愛してるのは、俺だよ」