朗の手は冷たい。

だけどそこには確かに、温かな体温が残っているのに。


それがもうすぐ、消えてしまうなんて───



「なら、生きててよ」


華奢な肩を掴むと、勢いのまま体が前に倒れた。

軽い朗の体はわたしの力に逆らうことなく押し倒されて、とす、という軽い音とともに、砂埃を舞い上げた。


わたしの下で、朗が砂浜に横たわる。


「……夏海?」


一瞬だけ顔を歪めた朗が、わたしを見上げる。

どうした、そう呟いて、わたしの髪に手を伸ばして。


真上には、満天の星空があって、後ろには、どこまでも続く広い海があるのに。

そんな自然の恩恵には背を向けて、わたしはきみだけを見ている。

これだけ美しい景色の中、それでも一番綺麗なのはきみだって言ったら、きみはわたしに呆れるかな。

ねえ、そんなことを本気で思うわたしは、やっぱり、馬鹿なのかな。