指先が、わたしの頬をゆるゆると撫でる。


何かの魔法みたいだ。

その指がひとつ、わたしの頬を撫でるたび、心臓が鼓動を速めるから。


だめだ、苦しくて見ていられない。

だけど、目を逸らせない。


だって、この目に、きみの綺麗な姿を焼き付けておきたいから。



一生、ずっと、何が起きたって忘れないように。




「……そんな顔をするな、夏海」


朗が、困ったように笑った。

そんな顔って、どんな顔なの、訊ねようとしても声が出ない。


ああ、そうか。

たぶん、きっと、わたしは。



今にも泣いてしまいそうな顔をしているに違いない。




「生きていたくなるだろ」




今のきみと、同じ顔だ。