朗が着ている制服のネクタイ。
それは、わたしのリボンと同じ、緑色のネクタイだ。
わたしの学校で、1年生を表す色。
「朗、わたしより年上だったんだ」
「まあな」
「見えないよ。年下って言われるならわかるけど」
「何言ってんだ、馬鹿」
口ではそう言いながら顔では笑って。
朗は、小さく息を吐き出すと、言葉を続けた。
「でもな、俺は学校に行けなくてもよかったんだ。こうやって制服を着れるだけでよかったし、何より自分が高校生であることが嬉しかった」
頭の中にある何かを掬い出すように、何度か瞬きをして。
「だけど本当は、それだけじゃ足りなかったんだよな。だから俺は、あの日、学校に行って、そして見つけたお前と一緒に、海に行こうとした」
遠くで、ドオンとお腹に響くような轟音が聞こえた。
花火の上がる音だ。
どこかで、お祭りでもやっているのかもしれない。