そんなこと、言わないでよ。
だってそれはこっちのせりふなんだから。
海を見せるくらいなんだっていうの。
わたしはきみのおかげで、この瞬間を、生きていられるんだ。
それがどれだけ大切なことか、今は、ちゃんと知っている。
それを大事に抱き締めて、きっとこれから先も生きていく。
それはきみのおかげだから。
この先に、わたしが出会う色んなことは、きみがくれたことになる。
全部全部、それは、きみが。
わたしにくれた、宝物───
朗が少し笑って、わたしの髪を指先で撫でる。
「父さんに会ったのなら、俺の体のこと、全部聞いたんだろ?」
静かな問い掛けにこくりと頷くと、朗は微かに目を細め、睫毛を揺らした。
「悪かったな、言わなくて」