◇
わたしたちは、波打ち際から少し離れた浜辺に並んで座っていた。
太陽はすっかり姿を隠し、青かった空には無数の星が浮かんでいる。
とても静かだった。
波が、砂浜へ押し寄せて割れる音だけが、辺りに広がって消えていく。
「ありがとう、夏海」
ふいに響いたその声に、わたしは視線を移した。
その先にいる朗は、目の前の海を見つめたままで。
「本当に見られるなんて思ってなかった。夢みたいだよ。
全部、夏海のおかげだ」
そして朗はわたしに向かい、ありがとう、ともう一度呟いた。
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