真昼の熱がすっかり冷めた砂浜は、歩くたびにしくしくと音をたてた。

寄せては返す波が、わたしたちの数歩先までやって来ている。


「……海だ」


波打ち際をじっと見つめながら、朗がそんな当たり前のことを呟くから、わたしはこっそり笑ってしまう。


「触ってみたら? せっかくだし、見るだけじゃなくてさ」

「……いいのか?」

「当たり前じゃん。冷たくて気持ちいいよ」

「……そうか、そうだな」


朗はなぜだか眉を寄せ、真剣な面持ちでこくりと頷いた。

数歩足を進め、波打ち際ぎりぎりのところに立って。

だけどそこで、ふいにわたしを振り返るから。


どうしたの、そう問いかけようとすると、朗は不安そうな顔をして。


「夏海も、一緒に」