「あ……」
自分が泣いているってことに、気付いていなかったんだろうか。
何度かカーデで目を拭った後、恥ずかしそうにわたしに目を向け、微笑んだ。
「……恥ずかしいな、泣くなんて」
その瞳はまだ微かに濡れて、海の向こうに沈もうとする太陽の光を反射させている。
わたしはその綺麗な瞳から、目を離すことができなくて。
「恥ずかしくなんてないよ。泣きたいなら、泣いていいよ」
好きなだけ。
きみの想いはわたしが全部、一緒に感じてあげるから。
泣きたいなら泣けばいいし、笑うなら、一緒に笑おう。
「ありがとう。でも大丈夫、もう泣かないから」
だって泣いたら、何も見えなくなるだろう。
朗はそう言って、わたしの手を握った。
「行こう、夏海。もっと近くに」