空はもう、半分以上が藍色に染まろうとしていた。

暗くなろうとする世界の中、砂浜だけが白く光る。


「朗」


浜辺に降りようよ。

そう言おうとして振り向いた。

だけど言葉が出なかった。


まるで日に触れたことのないような透き通った頬を、ゆっくりと伝う涙が、見えたからだ。


「……朗」


もう一度、彼の名前を呟いていた。

すると朗は、そこでやっとわたしの声に気付いたようで、ちらりとわたしに目を向けた。


「なに?」

「なに、って……」


わたしは朗の頬に手を伸ばし、親指で流れる涙を拭う。

朗はわたしを驚いたように見つめ、そしてそっと、自分の手でそれに触れた。