驚いた。
まさかあの父親が、朗をわたしに会わせるために連れてくるなんて思うわけもない。
「父さん、夏海に会いに行ったんだってな」
昨日会ったその人を思い浮かべていると、朗が少し声を低めて呟いた。
「うん、会ったよ。朗ってお父さん似だよね」
「そんなことないって」
「そんなことあるよ。目のあたりとかすごい似てた」
「やめろよ、なんか恥ずかしい」
少し早口になる朗に笑ってごめんと謝れば、朗はむくれていたのかしばらく黙って。
それからそっと、口を開いた。
「朝早く、目が覚めた。死にかけたみたいで、生きてたはいいけど体中がだるくて。だけど、ベッドで寝たままだった俺に、父さんが言ったんだ。
海に行きたいか、って」