乞うような掠れた声。

夏の風に、一瞬で溶けてしまうような声だ。


でも、その小さな声ひとつで、わたしの心臓はうるさいくらいに騒ぎ出す。


「……うん、わかった」



よかった、朗が後ろにいて。

だって、後ろにいたら、顔が見えないでしょう。


今、わたしの顔を見られたら、きっとすごく、笑われる。






「朗、どうやってここまで来たの」


いくらか進んだ頃、やって来た疲れを紛らわすようにわたしは朗に訊ねた。

相変わらずのん気に乗っているのであろう朗が、ゆったりとした口調で答える。


「父さんが連れて来てくれたんだ」